効果的な営業管理、営業組織マネジメントとは
2018/10/29
最終更新日 2019年6月28日
株式会社マーケティング・トルネードの佐藤です。
マーケティング分野や、セールス分野の経営コンサルタントをしていると、よく質問されることがあります。
そのなかのひとつが、「営業管理」、「営業マネジメント」についてです。
そこで、コラムとして少し文章に整理してみましたので、参考になる部分があれば幸いです。
(あと少しだけ加筆修正をしていく予定です)
目次
【関連キーワード:KPI、営業プロセス、営業マネジメント、営業管理、営業組織】
◆そもそも「営業管理」って何か?
正しく伝えようとすると小難しい言葉になりますが、これも大切なことなので書いてみます。
- 営業の計画数字を大きく下回ったりしないように、営業組織や、営業活動の全体を、合理的に、効率的に運営すること。
- 営業の仕事が円滑に運ぶように、営業関連の事務処理をうまくやれるように運用すること
- 営業ツールなどが効果的であるように改善・維持をすること。
- 営業効率を高めるために、営業に関する予測・計画・運営などをすること。
営業を「管理する」という言葉の意味からすると、上記のようになるはずです。
小難しくて、わかりにくいので、箇条書きにしてみますと、、、
- 売上の目標数字をつくること
- 目標達成のために必要なことを見積もること
- 実行計画をたて、それを実践させること
- それらが合理的・効率的に実践されているか監視すること
- 必要があれば、部下に対して軌道修正やアドバイスなどをして、やり方を変更させること
これが言葉の定義上の「営業管理」だということになります。
営業組織をまとめあげるリーダーという仕事は、少なくとも、上記の5つを仕事にするということになります。
これは企業にとって、重大な責任を伴うからこそ、とても重要な仕事と言えます。
どうして「営業管理」なんて必要になるのか?
会社というのは、創業者がいます。
会社を創業した頃というのは、最初は社長が営業マンであることがほとんどです。
そうやって会社は徐々に安定していきます。
そうすると、さらなる成長を目指す社長は、新しく営業マンを数人雇います。
そうやって、だんだん営業マンが増えていくのです。
ところが、この段階では、まだ「営業マンという、個人商店の寄せ集め」のような感じのチームだと言えます。各自が異なる営業スタイルを持ち、各自がそれぞれ違うツールを使い、得意とする顧客タイプも違うし、新規を追いかける営業マンもいれば、既存客ばかりを追う営業マンもいます。
優れた成績のやり手の営業マンもいるし、成績がパっとしない営業マンもいます。
教育制度も整備されていません。
新人さんの営業マンが入社してきたとしても、先輩営業マンにくっついて、「先輩の背中を見て営業を学ぶ」のが教育だったりします。
つまりこの段階では、教育・トレーニングの仕組みなんて無いのです。
この段階は、混沌とした「営業マンという個人商店の集まり」という営業チームです。チームとは言えないかも知れません。最初は、そうした「営業マンという人の集まり」が出来上がっていくのです。
こうして、この段階からさらに成長を続けたい場合、社長は「決心」をしなければなりません。
それは、しっかりとした「営業組織」としての運営をつくるという決心です。
さらに、同時に、組織を運営するリーダーを専任するという決心です。
当然ながら、リーダーは、営業組織を管理していくことになります。
こうして「営業管理」というのが必要となってくるわけです。
では、いよいよ、このコラムの冒頭でご紹介した、
- 売上の目標数字をつくること
- 目標達成のために必要なことを見積もること
- 実行計画をたて、それを実践させること
- それらが合理的・効率的に実践されているか監視すること
- 必要があれば、部下に対して軌道修正やアドバイスなどをして、やり方を変更させること
上記5つの項目について、ひとつずつ解説していきましょう。
◆1.売上の目標数字をつくる
企業の売上目標というのは、いろんな決め方があります。
「去年と比べて●パーセントアップ」という決め方もあるでしょう。
「市場シェア●位」というのを目標値にする会社もあります。
「ライバル企業の売上を超える」のを目標にしている会社だってあるし、
「採算分岐点を売上目標にする」ことだってあるでしょう。
なかには、「売上目標は作らない」という会社も存在しています。
これらは、戦略的に決めることが多いものです。
そして、戦略的に決定された会社全体の売上目標を、さらに、細かく分解して、具体的な目標数値としていくのが一般的です。
言い換えれば、営業組織のリーダーが「営業管理」という仕事をする上で決定するのは、「自分に与えられた部門売上の目標値」であることが多いようです。
◆2.目標達成のために必要なことを見積もること
◆3.実行計画をたて、それを実践させること
2.と3.は、まとめて解説します。
目標が定まれば、次は、達成するために必要なことを見積もり、計画を立てて、実行していくということになります。
ただ私の考えでは、この2つは、分割するのは適切ではないと考えています。
なぜなら、実践と、実行計画の調整は、同時に行われることが多いからです。
実践すれば、計画通りに進まないことがわかり、計画を調整し、実践に戻る。
その繰り返しは、連続的に行われることが多いからです。
例えば、地元の美容院があるとしましょう。
1.で設定した経営目標があり、その売上目標は月商300万円としたとします。
この場合でも、2.3.は切り分けることが難しいのです。
まず最初に、大きな売上目標をブレイクダウンして、小さな目標にします。
・白髪染めの売上で80万円
・カット&トリートメントで180万円
・店頭販売品の売上で10万円
・カラーで30万円
という小さな目標にブレイクダウンしたとしましょう。
これらの小さな目標を達成するために、
◆白髪染め(80万円目標)については地域のミニコミ新聞に、「カット&白髪染めでタクシーでご来店の方は、往復500円×2=1000円割引」という広告を6万円で出稿し、約12件の新規顧客を集客する計画。さらにその12件の新規顧客の約7割をリピート化するという計画です。
それに既存客からの売上を確保するためには定期発行物で接触を維持するという計画も立案しました。
◆次に、カット&トリートメント(180万円)は地域ポスティングと、最寄り駅での手渡しチラシ、さらにはスマホサイトからの新規問い合わせ予約を増やし、・・・・(以下略)・・・
と、非常に具体的な実行計画を作ります。
◆ここで、スマホサイトからの来店数を計測できるように、「予約コード Aー●●」という記号を、広告の電話番号の横に記載しておきます。
そうすることで、「ご予約ありがとうございます。ホームページの電話番号の下に、ローマ字のAから始まる予約コードが書かれていると思うのですが、教えて頂けますか?」
と電話口で計測することが可能になります。
これこそが、計画と実践と、数値の監視なのです。
こうした仕掛けを準備しておかなければ、次のプロセスの「監視」が出来ないからです。
こうした例であっても、スマホサイトからの問い合わせ数は、計画通りにならないことのほうが多いです。
そうすれば、計測とほぼ同時に、スマホサイトを修正しながら、また運用へ戻るということになります。
これらの計測項目のことを、KPIと呼ぶこともあります。
KPIは、「Key Performance Indicator」の各頭文字を取ったアクロニム造語です。
要するに、「この数値は、業績を評価するうえで、とても重要な数値だ」と考えられる数値指標のことをKPIと呼んでいます。例えば、『来店客1組を来店させるために費やした広告宣伝費用』は分譲住宅を販売している不動産会社にとって重要な数値指標なので、KPIと言えるでしょう。
なお、KPIは、日本語では「重要な業績評価指標」と翻訳することが出来ます。
(地域気象観測システムの、AMEDASアメダスは、Automated meteorological data acquisition systemのアクロニム造語です)
KPIについては、下記の4.監視で少し詳しく説明してみます。
◆4.それらが合理的・効率的に実践されているか監視すること
上記のように計画を建てたら、その計画がたしかに実行されているかどうか、効果的に運営されているかどうかを常に監視します。
よく監視対象とするポイントは、
◆見込み客を開拓する広告(チラシ、新聞広告、DM、看板・・・)による見込み客数とそのコスト
例えば、不動産会社であれば、「マンションモデルハウスに来場する見込み客を1組獲得するためにかかるチラシのコスト」が、監視対象となります。
◆見込み客が営業マンの目の前に現れて、個人情報が何件獲得できたかのパフォーマンス
例えば、展示会での当社ブースに立ち寄った見込み客数が100名だったとして、そのなかで名刺交換をしてくれた人が80人だったとすれば、ここは80%という数字です。
例えば、モデルハウスに来場してくれた顧客が100組で、アンケートに記入してくれた顧客が98組であれば、98%という数字です。
◆セールス活動は、部分に分解してKPIを設定する。
セールス活動は、「見込み客100人を、どれだけ成約することが出来たか?」という成約率を管理することが多いのですが、それだけでは足りません。
次のアポイントへつながった確率
見積書を提出した確率
仮クロージングできた確率
デモンストレーションをした確率
など、セールス活動を出来るだけ細かく分割した、各ステップ毎にKPIを設定すると良いでしょう。
重要:KPIを設定する意義
そもそも、こうしてKPIを設定するということは、すなわち計測ポイントが固定されることになり、営業のプロセスを標準化することになります。
よく、「売上目標が、なかなか達成できない」とか、「目標が絵に書いた餅に終わる」と嘆くリーダーがいます。
そうなってしまう理由は、営業マンが、大きな目標数値だけしか理解せず、具体的に何をすれば良いのかよくわからないまま仕事をするために、未達成になってしまうというのが原因として挙げられます。
※例えば、「夏までに8キロ痩せるぞ!」と目標を決めたは良いが、具体的に、どのように実践するかは各自に任されてしまうために、目標未達成になる確率が高くなるというのと同じです。それを細かくブレイクダウンされたKPIを設定して監視されることで達成率が上がるというわけです。
だからこそ、営業マンを集めて、全員で、「どのようなKPIを設定すべきか?」と議論とすり合わせをしていくことが重要なのです。
※KPIという用語について
このKPIという用語は、昨今になってよく使われるようになりました。
1961年のハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたロナルド・ダニエル氏の記事が源流だという情報もあります。
また、別の論文では、KPI活用の起源は、古くは、20世紀初頭には、デュポン社が投資利益率を展開したチャート・システムにさかのぼるとも言われています。
(正しい情報の裏付けが取れたら更新しますが、今のところは、あやふやです)
こうして、監視をしていくのです。
5.必要であれば、部下に対して軌道修正やアドバイスなどをして、やり方を変更させること
上記のような、計測・監視をすることによって、
◆顧客ターゲットを変えるべきか?絞るべきか?ずらすべきか?の判断材料が得られます。
◆集客ルートとなる媒体、コピー、オファー、スマホとの連携をどのようにすべきか考えることが出来ます
◆過度な数値計測をしていないか?の検証が出来ます。例えば、電話をかけた本数など報告させても同じ結果なのに、不要な報告をさせていないか?などです。
◆セールスの各段階が弱いのかがわかります。その結果、どの営業プロセスのロールプレイング練習をやらせるべきか?が決定されます。
◆1件の契約を獲得するために、いくらまでの費用をかけるべきか?を変更できます。
◆利益率が下がっている原因をつきとめられます。
だからこそ、適切な軌道修正や、改善アドバイスのヒントが得られるわけです。
こうやって、営業管理という仕事をしていくことになります。
もちろん、部下は人間で、機械ではありません。
ですから、KPI設定がどれだけ上手でも、アドバイス内容が合理的であったとしても、そこには、「対人関係というマネジメント」という要素が必要とされます。
モチベーションを上げたり、
スキル指導をしたり、
営業ツールを一緒に考えたり、
人間関係の悩みを聞いてあげたり・・・
リーダーの仕事は、奥深く、まるで終わりが見えません。
野球やサッカーなどのスポーツチームが優勝すると、その監督にスポットライトが当たることがあります。
優勝チームまで育てた名監督は、どのような育成ノウハウや手法、やり方をしているのか?それを知りたくなるからです。
しかし、その一方で、選手時代は大活躍をした人であっても、名コーチ、名監督になれるとは限りません。
メジャーリーグの野球選手でも、ボクシング世界チャンピオンでも、ハリウッドの名俳優であっても、彼らがみな、名指導者になれるとは限りません。
ビジネス分野で言うならば、「上司という仕事」がそれにあたります。
会社のなかで名プレイヤーとして、それなりに活躍したからこそ、「上司」に昇進することが出来ます。
しかし、そうだからといって、「優れた上司」になれるとは限らないのです。
数値での管理も大切です。
しかし、それと同時に、上司として、対人関係スキル、コミュニケーション、共感能力、感情コントロール、ストレスへの対処力など、さまざまな対処する能力が求められます。
優れた上司になるというのは、本当に奥が深く、果てしない道であり、学びが続きます。
このコラムも、そのひとつとして役立てば幸いです。
執筆者: 株式会社マーケティング・トルネード
佐藤昌弘
(執筆:2018.10.29)
(更新:2019.05.16)
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