営業ロールプレイングのやり方と効果を出す6つの工夫(研修講師が解説)

 

営業パーソンが2人以上になれば、嫌でも「優・劣」という結果がでます。

優れた営業パーソンがいる一方で、反対に、劣る人もいます。

結局、「優・劣」という結果から逃れることが出来ない、シビアな世界なのです。

 

「優・劣」の差は、どこから生じるのでしょうか。

「運」もあると思いますが、多くは営業スキルの差です。

 

営業はスキルだからこそ、努力や工夫が必要であり重要なのです。

 

これを執筆している私は、研修講師として、これまで何千人もの営業パーソン(営業パーソン)を指導してきました。

 

一部の天才営業パーソンというのは、確かに存在します。

彼らを見ていると、生まれつきの才能があるようにも見えます。

小さな頃から、社交性やコミュニケーション能力は磨かれ、その才能は開花し、会社に入社してすぐに成績を出し始めます。

 

でも、多くの営業パーソンはそうではありません。企業のなかで営業部門でMVPを受賞するぐらいの一流の営業パーソンであるほど、人一倍の「努力」や「工夫」を続けています。

 

この「努力」や「工夫」のなかでも、非常に重要なのが、ロールプレイング学習です。

 

 

 

 

この記事の執筆者プロフィール

株式会社マーケティング・トルネード 代表取締役
佐藤 昌弘

経営コンサルタント、研修講師
京都大学経営管理大学院元講師、岐阜大学大学院元非常勤講師
愛知県出身、京都大学工学部卒。地元都市ガス会社を脱サラ後、住宅リフォーム会社を創業。3年で年商3億円に成長後バイアウト。2002年株式会社マーケティング・トルネード創業。年商数百万円の個人事業者から一部上場企業まで、中小企業を中心に、累計5000件以上のコンサルティングを実施。心理学を応用した独自の営業トーク研修は好評。
(著書)
凡人が最強営業マンに変わる魔法のセールストークシュガーマンのマーケティング30の法則(監訳)儲かる営業力見るだけノート、最高の営業デビューなど、計28冊。
出版累計80万部を超える。

営業ロールプレイング(ロープレ)とは?

 ロールプレイングというのは、日本語では「役割演技」といいます。

その言葉の通り、ある役割を演じてみることで、実際に起こる様々な出来事への対処方法を学び、身につけようとするものです。

 

なかでも、「営業ロールプレイング」とは、見込み客との実際に起こりうる場面を想定して、

「営業パーソン役」と「見込み客役」という、ふたつの役を演じます。

そうすることによって、経験の浅い社員でも、具体的なノウハウを、自分で体験しつつ学ぶことができるからです。

 

お客さん役・営業パーソン役を演じながら、

・シナリオ

・身体の動かし方

・セリフ(営業トーク)

・営業ツールの使い方

などを習得していきます。

 

 

営業ロールプレイングの必要性:『感情労働』について

営業とは、感情労働でもある

感情労働という言葉をご存知でしょうか?

アーリー・ラッセル・ホックシールドという社会学者は、「肉体労働」とか、「頭脳労働」という考え方に、「感情労働」というものを提唱しました。

感情労働での顧客対応には、「表層演技」と「深層演技」があると言われています。

まさに、営業という仕事は、感情労働とも言えるわけです。

表層演技や、深層演技には、「稽古をして」挑む

 

「ロールプレイングって、なんか苦手だ・・・」

「ロールプレイングなんて、なんか恥ずかしくて出来ない…」

「相手が知人だと、気持ちが本気になれない」

「営業の現場ってのは、すべてアドリブなのだから、ロープレなんてしても、無駄でしょ…」

 

そんな風に考える人がいますが、それは間違いだと言うことなのです。

 

どれだけ名俳優だって、演技を「稽古なし」でぶっつけ本番で挑む人なんていません。

どんなに一流の野球選手だって、練習試合や、本番を想定したトレーニングをします。

格闘技の選手だって、相手は人間で、まったく同じ攻撃なんてありえなくても、練習・スパーリングをやります。

 

営業パーソンだって同じなのです。

ロープレによって、対応力は確かに向上するのです。

 

さらに、ロールプレイングには、数多くのメリットがあります。

 

ロールプレイング学習のメリット

  • なんども繰り返すことで、シナリオに慣れる
  • 自分自身のやり方に、良い点や、改善点などのフィードバック情報を得られる。
  • 先輩のロープレを見よう見まねで、観察し、自分のために役立てることが出来る。つまり、情報収集も出来るということです。
  • 自分自身が声に出すことで、自分のやり方に、「気づき」が得られることも多い。
  • 新しい営業のやり方を、模擬的に試すことができます。
  • 役を演じているという意識があるので、面と向かって断られたり、厳しい言葉を投げかけられたりしても、「役の上でのこと」と割り切って、自分自身を守ることもできます。
  • 仮定のキャラを演じる事ができるので、「強い営業パーソン」や「気弱な営業パーソン」など、複数の性格を演じることで、自分のキャラに気づきはじめるというメリットだってあります。

  

 

営業ロールプレイングの進め方(おすすめ)

 

私は、これまで経営コンサルタントとして20年近く、顧問先での営業ロールプレイングを何回やったか、数え切れません。

 

その経験から、効果のある営業ロールプレイングの進め方には、共通のコツがあることがわかってきました。それを少しご紹介いたしましょう。

営業ロールプレイングは、目的を明確化する

営業という仕事は、最初から最後までの流れ(シナリオ)があります。

例えば、

  1. 見込み客を開拓してくる。問合せがある。
  2. 初めて会う(初訪問、初来店など)
  3. 顧客へのヒアリング(状況理解)
  4. 自社からの提案
  5. 契約・申込みなど
  6. 納品時の再案件開拓など

 

営業ロールプレイングをスタートする前に、これらシナリオ全体を通してやるのか?

それとも、一部分だけをやるのか?

その目的を明確化する必要があります。

 

一般的に、営業ロールプレイングは、日々の仕事のあいまに行われることが多く、最初から最後までのプロセス全体を「演ずる」ほどの、時間的な余裕が無いことも多くあります。

だからこそ、ロールプレイングは「どの部分」をやるか、というテーマを決めて行うのです。

 

小さな部分に焦点をあてることで、細かくロールプレイすることが出来ます。

営業ロールプレイングは、3人一組でやると良い

「営業パーソン役」「お客様役」「観察者役」という3人一組で行うのが良いです。

 

一般的に、営業ロールプレイングというのは、表情、身のこなし、動作なども演じます。

営業パーソンが、自分自身で意識できなかった部分を、観察者役のひとが指摘します。

「観察者役」というのは、営業パーソンとお客様の様子をよく観察して覚えておき、あとから質問を投げかける役なのです。

例えば、「さっき、お客さん役のひとは腕組みをしたけれど、心のなかで何が起きたのですか?」とか、「あのタイミングで、あの言葉を発したのは、どのような意図があったからですか?」と、本人が何気なくやっていたことを拾い上げて質問します。

また、営業パーソンがやった内容の、良かったところなどもフィードバックしてあげるのも良いでしょう。

お客様役の「役作り」も大切

お客様のなかには、『単なる情報収集中で、まだ買うかどうか、やるかどうか、なにも決まっておらず、情報を集めている段階の客』がいれば、『いよいよ、A社かB社か、どちらにするか決めるために、比較情報を集めて判断しようとしている段階の客』もいます。

お客様役は、その役作りをしっかりやっておかないと、ロールプレイングが単なる「作業」になってしまうために注意してください。

せっかくやるのなら、営業パーソン役のひとにとって役立つロールプレイにしたいところです。

フィードバックは、即時おこなう

これは行動分析学の専門知識から、導かれたコツです。

「営業ロールプレイングで上手に出来た部分は、その場で、良い点をフィードバックしてあげると、印象に残って、学習効果が高まる」という事です。

反対に、「あの部分は駄目だから、修正しないといけない」という指摘フィードバックも、即時行われるほうが学習効果は高いと言われています。

 

これは、行動分析学でいうところの、「即時強化」という理屈にのっとっています。

 

他業種でロープレしてみるのも良い

自社が保険業界であれば、保険セールスのロープレだけでなく、たとえば住宅リフォーム業でロープレをやることも効果的です。

注文住宅営業や、不動産営業、住宅営業などの営業パーソンは、自動車販売や中古車販売などの営業パーソンを演じてみるのもいいでしょう。

住宅業界、注文住宅などは、専門用語も多いのですが、類似業界の営業パーソンになったつもりでロープレを行うと、専門知識で煙にまくことができない分、セールススキルそのものが問われるからです。

 

このとき、類似業界を選ぶことが大切です。

これは、あくまでも「類似」であればよく、まったく同じ業界でなくて構いません。

保険業なのに旅館業のロープレやっても効果が薄まってしまうからです。

一般的な、「営業のシナリオ」は、どんなものか?

 

世の中には、様々な営業シナリオがありますから、下記に記したものが正しいとは限りませんが、あくまで一般的な営業シナリオとして参考にして頂ければ幸いです。

下記のなかで、どのような【部分】を抜き出して営業ロープレをするかを決めるのに参考にしてください。

 

【一般的な営業シナリオ】

  • 1.見込み客の発掘・出会い

どんな商材であっても、新規見込み客と出会う瞬間があります。『会社に届いた資料請求メールに書かれている電話番号に、電話をして接触をする瞬間』、『展示会で名刺交換をする瞬間』、『紹介された客先へアポの電話をする瞬間』などなど、初めて人的な接触を行う瞬間があります。

  • 2.あいさつ&雑談

はじめて会ったら、挨拶や、雑談をします。

  • 3.本日の目的についての会話
    今日、どのような目的で面談をしてくれているのかを、しっかり確認をとります。さらに、営業シナリオは次のように続いていきます。
  • 4.ヒアリング・状況把握
  • 5.提案・プレゼンテーション
  • 6.クロージングもしくは、次回アポイント取得

 

 

営業ロールプレイングをやる時の注意点

 

ここで、営業ロープレのコツとして、『駄目なやり方を修正する』というのは非常に難易度が高いのでやめたほうが良いという事をつけくわえておきます。

 

営業ロールプレイングには、大きく2種類あります。

『売れていない営業パーソンの、駄目なやり方を修正しようとするロープレ

『売れている営業パーソンの、良いやり方を真似しようとするロープレ

 

私は、前者はおすすめしません

どこが駄目かを指摘し、それを修正させようとしても、上達しないことの方が多いからです。

出来るだけ、ロールプレイングは後者を中心に行ってみるようにしてください。

 

 

ロールプレイングを終わったら、営業パーソン役、お客様役、観察者役は、それぞれ、質問したいことや、確認したいこと、そうした事を話し合います。

同時に、上司がチェックをしている場合は、上司からのコメントなども、このタイミングで行うと良いでしょう。

 

この様子を、ビデオに録画することが出来れば、さらに良くなります。

ビデオを録画しておくと、力量の高い営業パーソンの口調やしぐさを見て覚えることができるだけでなく、自分の表情やしぐさ、話し方をチェックすることにも役立つからです。 

  

営業ロールプレイングの回数

 営業ロールプレイングに取り組みはじめた組織が、よく陥るのが、回数への過度な期待です。

 

「3回ほど、ロールプレイングをしてみたんですが、なかなか上達しません」

という悩みは、そもそも、回数が少なすぎます。

 

お芝居でも、スポーツのイメージトレーニングでも、なんども繰り返すことで、身についていきます。量稽古という言葉があるとおり、繰り返し、繰り返し、ロールプレイングを実施していくことが近道かも知れません。 

 

まとめ

このコラムでは営業ロールプレイングの目的や、標準的な営業のシナリオ(流れ)、ロールプレイングの人数、進め方、フィードバックの仕方、注意点などを挙げました。

 

「営業」という仕事は、個人の業績として評価されることが多いために、どうしても営業のやり方は、属人的になりがちです。営業のやり方は、自分のなかだけに隠しておくのではなく、お互いがロールプレイングで公開しあいながら、「良いやり方を真似する」という学びにつなげてほしいと思います。

 

成績不振の営業パーソンや、経験の浅い営業パーソンが営業ノウハウを身につけ、強い営業パーソンになっていくのが早い会社は、それだけライバル他社よりも有利になります。

優秀な営業パーソンが、後輩を育てることのできるリーダーにもなることが出来たら、営業チーム、ひいては会社全体は間違いなく強くなっていきます。

 

そのために、ぜひ営業ロープレを日常業務の中に取り入れることをお勧めします。

 

 

 

株式会社マーケティング・トルネードの営業研修の紹介
(ロープレ・トレーニングを含む)

このコラムを執筆したのは、株式会社マーケティング・トルネードの代表取締役 佐藤です。

 

弊社では、こうしたコラムでの情報提供だけでなく、実際に企業に訪問しての営業研修なども行っています。

・現状の営業シナリオのチェック

・ひとまずの営業スキルの向上指導と、トレーニングの実施

・営業シナリオの改善アドバイス

・営業ツールの制作助言や事例紹介

営業トークの指導だけでなく、営業の仕組みづくり全般への助言なども必要に応じて行います。

 

もしご興味がおありであれば、下記URLに、「本当に効果のある社員研修とは」という、もう少し詳しいご案内ページを準備しておりますので、そちらも検討材料にして頂ければ幸いです。

https://marketingtornado.co.jp/wordpress2/support-menu/employee-training/

 

 

 

 

執筆者:株式会社マーケティング・トルネード 代表取締役 佐藤昌弘

 

 

 

 

 

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